ディサースリア(Dysarthria)の見方

第17回日本言語聴覚学会の参加報告をうけ、私の視点(回復期~生活期、終末期、精神科領域)から思ったことを投稿します。

マクロの目とミクロの目

  • マクロ
    • 言語聴覚士への依頼(医師からの処方)の43%にディサースリアを認める
    • ディサースリアの45%に嚥下障害を認める
    • ディサースリアの18%に失語症を認める
    • ディサースリアの75%が発話明瞭度1~1.5
    • ディサースリアのリハビリテーションは方針・ニーズなどによって治療優先度が変わる
  • ミクロ
    • 痙性ディサースリアは運動パターンの障害(病的共同運動、分離性の低下、運動変換速度の低下)
    • 運動可動域、筋力低下の影響は少ない
    • 評価(交互変換運動、フォルマント、声帯のオン・オフ、鼻咽腔閉鎖、口唇の突き出し-横引き)
  • マクロとミクロのバランスが重要

椎名英貴先生(森ノ宮病院リハビリテーション部)

私の体験談からも言えることですが、患者様・ご家族にとってディサースリアは他の障害に比べ「鬼気迫る感が少ない」というか「他の障害と向き合う方がキツイ」のかニーズとしては後回しにされやすいです。

構音の改善は嚥下機能の改善にもつながるため、嚥下障害を合併している患者様には軽度でも自身で機能維持が行えるようになるための自主練習を早い段階で行えるようにアプローチしています。長期的には年齢に伴う筋力低下、再発などから嚥下障害による肺炎リスクなどが高くなるからです。軽度でもできる限り機能の改善が行えるうちにやっておきたい。

そのことがなかなか患者様・ご家族に伝わりません。当然です。「今、他の事で頭がいっぱいだから。一応伝わるから。」方針・ニーズなどによっては訓練の優先度は下がりがちなディサースリアです。しかし、専門家としては危機感をもち、患者様やご家族が求める満足感の高い訓練の中に「構音練習を織り交ぜる」ことくらいはしないとなと意識して行っています。

評価・訓練で重要なこと

運動パターンの障害を評価し、その評価項目と類似した課題を基礎から応用まで段階的に、ときには般化を促しながら行っていく事は構音訓練を行う中でかなり重要と考えます。

私が受けた報告には姿勢などの話は出てきませんでしたが、土台となる体を作る・安定させる環境を調整すると言ったアプローチを優先し行うことで、「できる機能」つまりここでは運動パターンの障害の改善を効率よく行えるといえます。

言語聴覚士は身体を触ることが苦手で、末梢を触る練習が主となりがちです。理学療法士や作業療法士と協力しながら行うなら良いですが、それを知らず末梢のみの練習を継続している言語聴覚士であるなら注意が必要です。

中枢から安定させ、末梢の機能を最大限生かせる状態で訓練を行うことが重要で、その効果は明らかです。…といった内容は椎名英貴先生の著書から読み取れます。是非読んでみてください。

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マクロとミクロのバランス

上述した通り、患者様・ご家族と言語聴覚士の視点ではずれが起こりやすいです。ニーズはニーズとして受け止める必要があり、回復期として在宅に帰ることを優先するあまり失語症の訓練のみを行うことはお勧めできません。

ディサースリアの機能向上は長期的に重要ですし、プラトーも高次脳機能に比べ早く迎えやすいです(悪い運動学習をしてしまうため)

患者様・ご家族になかなか必要性を認めてもらえないのであれば、次の施設、ケアマネと連携を図り、患者様本人が自然とディサースリアを改善できる、現状を維持できる環境を整えていく必要があると考えます。

椎名先生とは「バランス」の意味が少しずれているかもしれませんが、ご了承ください。患者様・ご家族にとって退院後も陰から支えられるような存在になれたらいいなと思う次第です。

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